行政書士事務所開業までの軌跡

行政書士事務所開業まで実務について勉強したことを記録しています。

「特定技能「介護」の利点と将来性:介護現場で外国人採用することによる新たな可能性」

2025年には団塊の世代の全てが75歳以上となり、日本は超高齢社会を迎えます。

・65歳以上の高齢者割合→日本人口の約3.3人に1人

・高齢者人口の20%が認知症患者

となり、介護する側の人材は38万人も不足することが予測されています。

そんな来たる2025年問題に向けて、国が打ち出している対策の一つが、

 

介護ロボット

介護のDX (デジタルトランスフォーメーション)化

外国人労働者

 

です。

今回は

外国人労働者

について注目して解説していきます。

 

介護ロボットや介護のDX化のことについて触れている記事は下記から

 

doi-gyoseishoshi.hatenablog.com

 

doi-gyoseishoshi.hatenablog.com

 

外国人労働者のことに関しては今回の記事は前回からの続きのものになります。

過去の記事が一本目の記事になりますので、ぜひ下記より最初からご覧になってください。

 

doi-gyoseishoshi.hatenablog.com

 

【前回のおさらい】技能実習制度の問題点を改善し、誕生した特定技能制度

特定技能制度とは?

特定技能とは、2019年4月に創設された、人手不足が深刻とされる特定産業分野(12分野・14業種)において外国人労働者を受け入れるための在留資格です。

現在は特定技能1号と2号があり、2021年4月時点では殆どが特定技能1号取得者です。

 

早い話、今まで外国人の方を受け入れるのに一般的だった技能実習制度に比べて、人出不足を解消するための制度として生まれているため、

・単純労働を含む幅広い業務が可能(技能実習では制限が多い)

・長い年月勤めてもらうことが可能(技能実習では最長5年で必ず帰国)

・転籍(転職)が可能(技能実習では不可)

などのメリットがあり、雇用する側も働く外国人側も双方にメリットがある制度です。

 

今回は特定技能制度についてもう少し詳細を解説していきます。

 

特定技能は1号と2号の2種類

特定技能1号と特定技能2号の違いとは?

簡単に言うと特定技能2号とは特定技能1号の上位互換です。

技能水準の違いを比較してみますと、

  • 特定技能1号の「相当程度の知識または経験を必要とする技能」とは、特別な訓練等を受けることなく、一定レベルの業務を遂行できる水準です。
  • 特定技能2号の「熟練した技能」は、長期間の実務経験等から熟練した技能を身に付けており、現場の作業者のリーダーとなって指示や監督ができる水準が求められます。

特定技能1号へは、技能実習2号を良好に修了することでも移行が可能です。

この特定2号の在留資格を取得することで、外国人労働者は在留期間が条件によって永続になったり、家族の帯同を許可してもらえるようになります。

特定技能2号のメリット

先述した通り、特定技能2号には様々なメリットがあります。

それが下記の表のとおりです。

特定技能1号と2号の比較

しかし、2022年までは特定技能2号を取得する外国人労働者はほとんどいません。

メリットがある制度にも関わらずなぜなのでしょうか?

2023年から特定技能2号の分野が大幅に拡張されました

2022年までは建設と造船・舶用工業の2分野のみで、対象になる外国人労働者の方が少なかったのです。新たに2023年に9分野で追加されています。つまり、2023年からは特定技能2号を取得する機会が様々な分野の外国人の方に与えられたということなのです。

下記の表は、特定技能1号から2号への移行が可能なものです。

特定技能1号から特定技能2号への移行が可能な職種※黄色塗りつぶしは従来から可能だったもの

介護だけ特定技能2号の移行が不可となっています。

なぜでしょうか?

介護分野については在留資格「介護」があるため、特定技能2号がない

過去の記事でもお話ししました外国人労働者の方のうち、介護の部門で働くことのできる条件は下記の4項目でした。

  1. 「介護」の在留資格を持つ外国人
  2. 技能実習「介護」の在留資格を持つ外国人
  3. 特定技能「介護」の在留資格を持つ外国人
  4. EPA」の在留資格を持つ外国人 

詳細を知りたい方は過去の記事から

 

doi-gyoseishoshi.hatenablog.com

 

 

上記のうち、1.「介護」の在留資格を持つ外国人などの別の移行先があることから特定技能2号の創設は見送りとなりました。

では特定技能2号がない「介護」分野の移行はどういったものがあるのでしょうか?

特定技能2号がない「介護」分野の移行の例

特定技能→在留資格「介護」

特定技能で働ける5年の期間内に、介護福祉士資格を取得すれば、その後在留資格「介護」に移行することが可能です。

介護福祉士試験受験には、通常3年の実務経験が必要です。このため、最短で3年間の実務経験に加え、試験までの日数や登録手続きにかかる期間などを考慮すると、在留資格「介護」への移行には通常4~5年程度の時間がかかると見込まれます。

技能実習→特定技能→在留資格「介護」

技能実習2号を満了し(3年間)、その後特定技能に移行してから介護福祉士資格を取得する場合、迅速な資格取得が鍵となります。技能実習生として初めて来日した際には、介護に関する専門知識が不足しているため、介護福祉士試験の受験資格に必要な3年の実務経験を積んだとしても、即座に介護福祉士試験に合格することは容易ではありません。

 

まとめ

特定技能という在留資格はまだ新しく、今後その数が増加する傾向にあります。現行の在留資格「介護」や「EPA」などは、学歴や資格の取得など、一定のハードルが存在し、採用までのプロセスが複雑です。

特定技能「介護」以外でも介護職に就くことは可能ですが、企業としては外国人を採用し、適切に管理し、効果的に教育を行うためには多くのリソースが必要です。特定技能「介護」はその点で経済的で、外国人を受け入れる上で有利な条件が整っていると言えます。他の在留資格に比べても、特定技能は多くの外国人を確保しやすく、制度的な利用がしやすい特徴を持っています。

業務範囲が広く、今後の需要も見込まれることから、特定技能「介護」は大きな期待を集めています。今後ますます一般的になるでしょう。介護の現場において、特定技能外国人を受け入れる可能性を検討してみることは一考の価値があります。