行政書士事務所開業までの軌跡

行政書士事務所開業まで実務について勉強したことを記録しています。

「相続や贈与で手に入れた土地も注意!農地転用のすべて」

親族の方から、土地を贈与された。相続した。などの経験ありますか?その土地がのうちである場合、「農地転用」という手続きをしないといけないのはご存知でしょうか?

日本には日本の農業生産力を守るために農地法という法律が存在し、勝手に農地を売却したり、地目を変更したり、その土地に家を建てたりすることは違法です。違反した場合3年以下の懲役または300万以下の罰金に処せられることがあります。

ですので、土地を処分したい場合には、農地転用などの手続きを経る必要があるのです。
ただし、農地転用とひとことで言っても、フローや決まりが沢山あります。今回は農地転用について解説していきたいと思います。

 

 

農地転用をする場合の2つのパターン

① 農業委員会への「届け出」手続き

市街化区域内にある農地を転用する場合は、各市町村が指定する提出書類を用いて農業委員会に届け出を行う必要があります。毎月の提出締切日が設定されているため、締切日を確認しましょう。締切日を過ぎると、書類審査の開始が1か月遅れてしまいますので、転用が急務な場合は注意が必要です。通常、締切日から1週間~10日ほどで返答が届きます。

都道府県からの「許可」手続き

市街化区域では届出があれば許可は不要ですが、市街化調整区域は市街化を抑制する地域です。したがって、市街化調整区域内の農地を転用する場合は都道府県知事からの許可が必要です。許可申請は農業委員会を経由して都道府県に提出されます。この手続きには通常、締切日から1か月半ほどで返答があります。同様に、締切日や提出書類の確認を怠らず、スケジュールに余裕をもって進めることが重要です。

 

自分の農地転用をしようとしている土地が市街化区域か市街化調整区域化で手続きが変わりますので注意しましょう。

 

農地転用の種類(4条許可と5条許可)

権利者が農地を転用する「農地法4条」

農地法4条許可とは?

農家や所有者が自らの農地を転用する場合、これは「農地法4条」に基づく手続きとなります。

費用

届出・許可申請には直接の費用はかかりませんが、必要な書類の取得には手数料が発生します。専門的な書類が多いため、行政書士に依頼することが一般的です。依頼先によって異なりますが、届出の場合は約3万円~5万円程度、許可の場合は約6万円~8万円程度が一般的です。

必要書類と手続き方法

  • 申請書(4条)
  • 住民票
  • 登記簿謄本
  • 公図
  • 利用計画図(企業による)など

転用後に土地で事業を行う場合には、事業計画書や事業証明書(または法人登記簿謄本)も必要となります。目的や土地の大きさによって必要な書類が異なりますので、市役所などで詳細を確認しましょう。

無許可・未届で工事を進めた場合

無許可・未届のまま工事を進めると、契約は有効ですが、工事停止命令または原状復帰命令が下されます。このような事態を避けるためにも、正確かつ適切な手続きを行うことが重要です。

 

農地を転用するための権利設定行為「農地法5条」とは?

転用の目的で農地を売買する場合、「農地法5条」が関連します。具体的には、不動産会社がマンションの建築などの目的で農地を取得するケースが該当します。

費用

5条の場合も届出・許可申請には直接の費用は発生しませんが、必要な書類取得には手数料がかかります。行政書士に申請代行を依頼する場合、届出の際には約3万円~5万円程度、許可が必要な場合には約7万5千円~8万円程度が一般的です。申請書以外の書類は、4条と大差なく必要となります。

必要書類と手続き方法

  • 申請書(5条)
  • 住民票
  • 登記簿謄本
  • 公図
  • 利用計画図(企業による)など

転用後の事業用途や農地の広さによっては、添付書類が異なりますので、市役所などで確認が必要です。

無許可・未届で工事を進めた場合

無許可・未届での工事進行は契約が無効となり、工事停止命令または原状復帰命令が下されます。

農地転用に関する注意点

農地転用後の固定資産税

農地を転用すると、地目が「農地」から「宅地」に変更されるため、固定資産税の評価額が上昇します。固定資産税は1月1日時点での現況で基準が決められますので、転用の時期も検討が必要です。早めに手続きを進め、固定資産税の変更に備えましょう。

登記地目の変更

農地法の手続きが済んだ後、地目の変更手続きを行います。法務局が現地を訪問したり資料を調査するため、登記簿謄本などの資料が必要です。個人での手続きも可能ですが、専門書類の準備が必要であり、時間もかかるため、行政書士に依頼することをおすすめします。ただし、農地法の手続きは通常の不動産手続きとは異なるため、農地法手続きも得意とする行政書士を選ぶことが重要です。

 

まとめ

農地転用は手続きも含め、専門知識が必要なため、行政書士のサポートを受けることで正確かつ迅速な対応が可能です。行政書士の選定には慎重に取り組むようにしましょう。