行政書士事務所開業までの軌跡

行政書士事務所開業まで実務について勉強したことを記録しています。

運送業許可の要件と人員条件を解説

運送業を独立して開業したいという方いらっしゃると思います。

また、軽自動車などで運送・配達することができるので、

トラックなどの大型免許が不要で、運送業を開始することもできます。

その場合、トラックの購入費用や駐車場の広さを確保しなくてよいなど、

コストダウンも可能なため、初期投資を抑えて開業することができます。

ただし、運送業を開業するためには、許認可を取得する必要があり、

様々な要件をクリアする必要があります。

ということで、今回は運送業開業のための許認可の要件と人員条件について

解説します。

 

運送業許可とは?

そもそも運送業には許可が必要なことをご存知ない方もいらっしゃると思います。

運送業許可とは、一般貨物自動車運送業を行うために必要な許可のことを指します。

簡単に言うと代金を頂いて、トラックなどで荷物を運ぶ場合は運送業許可を

取得をする必要があります。

 

運送業許可が不要なケース

運送業許可を受けなくてもよいケースがあります。

自社の荷物を運ぶ

自分の会社で製造した商品や製品などを加工先である工場や

日常的にやり取りをしている取引先までトラックで運ぶ場合には、

報酬をもらうことがないため、運送業の許可は必要ありません。

ただし、自社のグループ会社の製品・商品を運ぶ際は注意が必要です。

グループ会社から運賃をもらった時点で、それは運送業許可が必要になります。

グループ会社とはいえ、運賃のやり取りがあれば、報酬が発生したことになるので、

運送業許可をとならなくてはなりません。

軽自動車を使って荷物を運ぶ

軽自動車を使って荷物を運ぶ場合は、運送業の許可は不要です。

他人からの依頼で運賃や報酬をもらっていても許可不要です。

その代わり、軽自動車を使って運送を行う場合には、

貨物軽自動車運送事業経営届出」を行う必要があります。

いわゆる「黒ナンバー」というものです。

黒ナンバーの登録は、通常の運送業許可を得るよりも要件が少ないです。

 

自動二輪車を使って荷物を運ぶ

二輪自動車(バイク)で荷物を運ぶ場合は、有償であっても運送業には当たりません。

ただし、二輪自動車を使って運送業を行う場合には、軽自動車と同様、

貨物軽自動車運送事業経営届出」が必要です。

ちなみに軽自動車は黒ナンバーですが、バイクは緑ナンバーです。

また排気量が125cc未満の二輪自動車については、貨物軽自動車登録は

必要ありません。

 

運賃を貰わずに荷物を運ぶ

運賃をもらわず、他の会社の製品や商品を運ぶ場合も運送業の許可はいりません。

ただし、実質的に請求金額に運賃が含まれていれば、運送行為を行っていると

見なされ、税務署から指導を受ける可能性もあります。

特に建設業者などでよく見られますが、仕事を請け負った先の建築資材を建築現場まで

運ぶ場合に、請求書には運賃と書かれていない場合です。

実際の建設費用以上の金額が請求書に上乗せされている場合は、

運送業許可が必要なので注意しましょう。

 

運送業許可に必要な条件

人員の条件

申請者の法令試験への合格

申請者が法令試験に合格しなければ運送業の許可を取得することはできません。

法令試験は、一般貨物自動車運送事業法をはじめとした自動車運送に関する法令に

関する30問の問題が出され、24問(8割)以上の正解で合格です。試験時間50分です。

法令試験を受験するのは、

個人事業の場合 ⇒ 事業主本人

株式会社などの法人 ⇒ 運送事業の担当する常勤の役員のうちひとり

です。

受験のタイミングは許可申請後で、2回以内に試験に合格できなければ、

その申請は却下となってしまいます。

2回不合格の場合でも、再度許可申請書を提出すれば、法令試験を再受験することは

可能ですが、時間もかかるので極力一発で合格したいところです。

申請者が欠格事由に該当しないこと

どの許認可申請にも出てきますが、許可申請者が以下の

どれか1つにでも該当してしまうと許可を取得することができません。

許可申請者が法人の場合は、その法人の役員(取締役と監査役)が

1.~2.と4.~5.の欠格事由に該当しないかが審査対象となります。

 

〈欠格要件〉

  1. 1年以上の懲役または禁錮以上の刑を受けてから5年経過していない
  2. 一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可取消しから5年経過していない
  3. 許可申請者の密接関係者(親会社・子会社・グループ会社等)が一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可取消しから5年経過していない
  4. 一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可取消しの処分逃れのため自主廃業した場合、その届出の日から5年を経過していない
  5. 許可申請者が営業に関して成年者と同一の行為能力を有しない未成年者又は成年被後見人である場合、その法定代理人が上記3.を除く欠格事由に該当する場合
5人以上の運転者

トラック運送事業を経営するための許可を取得するためには最低でも5人の運転者が

必要になります。

その理由は単純にモノの要件で最低5台の車両が必要となるためです。

また、ドライバー(運転手)としての要件は、

雇用期間が2か月以内の短期雇用労働者

日雇いのアルバイト

14日間以内の使用期間中の者

については、乗務させることはできません。

申請書提出時点で5人確保できていない場合であっても、

許可取得後の運輸開始前報告の前までに5人以上確保できる見込みであれば、

許可申請手続きを進めることが可能です。

運行管理者

運送業の許可を取得し運輸開始を行うためには最低でも常勤の運行管理者を

1名確保する必要があります

 

運行管理者の所要人数は

車両29台までは1名

以降30台ごとに1名増員

という条件があります。

 

運行管理者には、

5年以上の実務経験と5回以上の講習受講を受ける

運行管理者試験に合格する

の2つのどちらか一方で運行管理者になることができますが、後者が一般的です。

 

ちなみに運行管理者試験を受験するためには、

1年以上の事業用自動車の運行管理の実務経験

自動車事故対策機構などが開催する運行管理者基礎講習を修了

のいずれかを満たす必要があります。

整備管理

また、車両整備を管理する「整備管理者」も最低1人必要になります。

こちらは運転者と運行管理者、どちらかが兼任しても問題ありません。

 

整備管理者になれる者は、以下になります。

一級、二級又は三級の自動車整備士技能検定に合格した者

過去2年以上の運転者経験を証明でき、かつ整備管理者選任前研修を修了した者

※過去2年間の実務経験を証明できる者は、運送業許可業者又は整備工場になります。

※整備管理者はドライバーと兼務することができます。

 

まとめ

その他、人員の条件以外には

・営業所・休憩室

・駐車場

・車両

・資金

の4項目があります。これらに関しては次回解説していきます。