行政書士事務所開業までの軌跡

行政書士事務所開業まで実務について勉強したことを記録しています。

飲食店のお酒販売で成功するために知っておきたい法的なポイント

飲食店営業に欠かせないもの。それはお酒の販売ではないでしょうか?おいしいお料理とおいしいお酒を求めて、お客様はお店にやってきます。飲食店を営業する側にとっても、酒類の販売は客単価をあげることができ、売り上げに貢献してくれます。また料理と比べて調理の必要がないため、手間と人件費を押さえることにより利益率も上げやすいというメリットがあります。

前回の記事では、飲食店でお酒を提供する場合、酒類販売業免許は不要という話をさせて頂きました。飲食店の場合、様々なケースで風営法許可や深夜酒類提供飲食店営業の届け出など必要な免許や許認可が変わってきます。

未開栓のボトルや樽などのお酒を販売するためには免許が必要であり、その免許にも種類があります。取得する免許によっては事業計画などの作成が必要だったりと様々な要件があります。

今回は、酒類販売業免許や酒類免許の取得要件について解説していきます。前回の記事からの続きとなるため、ぜひ下記からご覧ください。

 

doi-gyoseishoshi.hatenablog.com

 

 

【前回のおさらい】酒類販売業免許には2種類ある

酒類販売業免許は、その販売形態に応じて酒類小売業免許酒類卸売業免許」に区分されます。それぞれ対象となる事業や特徴が異なるため、飲食店を開業したい方や酒類の卸売業を始めたい方は違いを知っておきましょう。

酒類小売業

一般消費者や飲食店など向けにお酒を販売する酒屋やスーパーマーケット、コンビニエンスストア、ネットショップなどは、酒類小売業に分類されます。

酒類卸売業

エンドユーザーでなく、酒類販売業者や酒類製造業者に対するお酒の卸売ビジネスは酒類卸売業と呼ばれ、問屋がこれに該当します。酒蔵・メーカーと小売店をつなぐのが酒類卸売業です。

 

酒屋を開業する流れ


1.仕入先の確保

販売免許を取得し、酒屋を開業するためには、まずお酒をどこから仕入れるかを明確にする必要があります。問屋や酒蔵との契約が開業の基盤となります。問屋から仕入れることで豊富な品揃えが期待できますが、酒蔵との契約を結ぶことで市場に出回らない特別なお酒を提供することも可能です。

2.販売計画と事業計画書

販売免許の取得に向けて、お酒の仕入価格や小売価格だけでなく、店舗運営にかかる家賃、光熱費、通信費、人件費、宣伝費などの経費も考慮し、事業計画書を準備します。これは免許取得の際に必要な書類となります。

3.販売場所の準備

酒屋の店舗においては、開業資金やコンセプトに合わせて店舗の立地、広さ、周辺環境などを選定します。試飲スペースを設ける場合は、保健所からの飲食店営業許可も取得する必要があります。ネットショップを検討する場合は、ウェブサイトの構築も進めます。

4.酒類販売業免許の取得

仕入れ先や事業計画、販売場所が確保できたら、次は酒類販売業免許の取得申請です。このプロセスについては後述します。

 

酒類の販売業免許取得要件

酒屋の開業においては、顧客やネットショップ向けの対面販売の場合、「一般酒類小売業免許」、ネットショップなどの場合は「通信販酒類小売業免許」の取得が必要です。この免許を取得するためには、以下の要件をクリアする必要があります。

免許取得の要件

人的要件(酒税法10条1号から8号): 過去に法的な違反処分や刑罰を受けたことがなく、一定期間経過していること。

場所的要件(酒税法10条9号): 販売場所が他の酒販店や製造場と異なり、特定の条件を満たしていること。

経営基礎要件(酒税法10条10号): 破産や税金の滞納、経営基盤が薄弱でないこと。

需給調整条件(酒税法10条11号): 販売する酒類の品目を守り、価格や品質を適正に保ち、需給の均衡を維持すること。

今回は抜粋して書いていますが、免許取得の要件は細かく定められているため、下記URLより確認ください。

免許申請の手引|国税庁

取得にかかる費用

免許1件につき、登録免許税として3万円が必要です。その他、必要な各種証明書を発行する手数料も必要になります。税務署で免許証を受け取る際、登録免許税の領収証書を提出します。

申請に必要な書類

一般酒類小売業免許と通信販酒類小売業免許では、申請に必要な書類が一部異なります。詳しくは下記URLから確認するようにしましょう。

免許申請の手引|国税庁

 

酒類を販売する際の留意点

酒屋などによる酒類の販売は、複数の法律による制約や義務が存在します。以下に、具体的な留意点を挙げておきましょう。

未成年者への販売禁止

法令: 未成年者飲酒禁止法
留意点: 満20歳未満への酒類販売は法律で禁止されています。販売時には年齢確認を行い、「20歳未満の者への販売は行いません」との表示が必要です。

仕入先・販売方法の遵守

法令: 酒税法酒類業組合法
留意点: 酒屋は酒類卸売業免許を持つ卸売業者または製造者からのみ仕入れが許可されます。通信販酒類小売業免許だけで一般酒類小売業免許を取得していない場合、店頭や他の酒類販売業者への販売はできません。

酒類販売管理者の選任

法令: 酒税法
留意点: 酒類小売業免許取得後、販売場ごとに「酒類販売管理者」を選任し、税務署に届け出る必要があります。この手続きを怠ると過料が科されます。

酒税法上の義務遵守

法令: 酒税法
留意点: 酒屋は酒類仕入れと販売の帳簿を作成し、毎年所轄の税務署へ酒類の品目別販売数量と年度末の在庫数量を申告する義務があります。帳簿は5年間保存されます。

特定商取引法の対応

法令: 特定商取引法
留意点:信販売で酒屋を開業する場合は、特定商取引法に基づく表記を掲載する必要があります。取引上のトラブル防止のため、法で明記された項目を表示します。

容器のリサイクル法の遵守

法令: 容器包装リサイクル法
留意点: 売上高7,000万円を超えるか、従業員の数が5人を超える場合、販売に使用するレジ袋や包装紙に再商品化の義務が生じます。容器リサイクル法の推進に意識を向ける必要があります。
これらの法令や留意点を遵守することで、合法かつ適切な形で酒類の販売を行うことができます。

 

まとめ

飲食店の開業を考えている方は、お酒の提供でお店の魅力を引き立てたいですよね。酒類販売業免許の取得には、一般酒類小売業免許や通信販酒類小売業免許があり、それぞれ一定の要件をクリアする必要があります。未成年者への販売禁止や法令遵守はもちろん、特定商取引法や容器包装リサイクル法への対応もお忘れなく。行政書士などの専門家の協力を得つつ、法令順守で素敵なお店をつくりましょう。