行政書士事務所開業までの軌跡

行政書士事務所開業まで実務について勉強したことを記録しています。

不動産取引で独立するためには?~宅地建物取引業免許の申請

不動産取引、いわゆる宅地建物取引業で独立・開業したい方いらっしゃると思います。

宅地建物取引を業務として継続的に行う場合は、宅建業免許が必要となります。

今回の記事では、そのことについて記事を書いていきます。

 

 

宅地建物取引業法の目的~なぜ免許の取得が必要なのか?

宅地建物取引業法の第1条に明記されています。

<第1条>

この法律は、宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施し、

その事業に対し必要な規制を行うことにより、その業務の適正な運営と

宅地及び建物の取引の公正とを確保するとともに、

宅地建物取引業の健全な発達を促進し、もつて購入者等の利益の保護と

宅地及び建物の流通の円滑化とを図ることを目的とする。

引用:宅地建物取引業法

 

つまり、人間生活の基盤である「衣・食・住」の「住」において、

悪質な業者が知識や経験が乏しい一般人に損害を与えることを防ぐことが

宅地建物取引業免許の目的です。

知識面で有利な宅地建物取引業者を対象に、

業務の適正な運営と宅地及び建物の取り引きの

公正確保を目的とする宅地建物取引業免許制度を取り入れたのです。

 

まとめ

・購入者等の利益の確保

・宅地及び建物の流通の円滑化

⇒ 簡単に言うと、不動産の素人(一般人)が不動産の玄人に騙されないように、

  するための法律ということです。

 

宅建業が必要な要件

不特定多数の人を相手方として宅地建物取引を

反復または継続して行うときに宅地建物取引業免許が必要です。

下記の表で〇がついているものは宅建業免許が必要です。

例)

・賃貸アパートの大家さん 

⇒ 自己物件を賃貸する ⇒ 宅建業は不要

・大家さん所有のアパートを仲介する不動産会社

⇒ 反復または継続的に他人の物件を媒介する ⇒ 宅建業は必要

・自己所有の土地付きの建売住宅を販売している不動産会社

⇒ 反復または継続的に自己物件を売買する ⇒ 宅建業は必要

 

自分がどの取引を行うのか、宅建業免許がいるのかどうかを確認しましょう。

 

開業するためのフローは?

1.経営形態、業務形態を決める

経営形態の選択 「法人」or「個人事業主

それぞれのメリット・デメリットは次の通り。

 

「個人」のメリット・デメリット

開業手続きは、税務署への届出のみで可なので簡単。

開業時の申請費用等のコストは、会社経営よりも少なくて済む。

信用面では、個人事業者との取引を制限している企業がある。

責任面では、事業主が無限の責任を負う。

 

「法人」のメリット・デメリット

開業手続きは、税務署への届出と登記申請手続きが必要

開業時の申請費用等のコストとして、定款の認証手数料等が必要になる。

信用面では、銀行やリース会社と取引する場合、信用されやすい傾向がある。

責任面では、株式会社の場合は出資した範囲内で責任を負う

 

法人の設立については下記の記事を参考にしてください。

doi-gyoseishoshi.hatenablog.com

 

 

不動産業の業種形態の選択 賃貸仲介業 or 売買仲介業 or 賃貸管理業

・賃貸仲介業

物件の所有者と借り手との間に立って契約を仲介することで報酬を得る業務。

主な仕事内容は、物件情報の収集や広告、見学や契約書作成です。

・売買仲介業

物件の所有者と買い手との間に立って契約を仲介することで報酬を得る業務。

主な仕事内容は、物件情報の収集や広告、査定や価格交渉、契約書作成です。

・賃貸管理業

物件の所有者に代わって物件の管理や運営を行うことで報酬を得る業務です。

主な仕事内容は、入居者募集や家賃回収、修繕や清掃、トラブル対応です。

 

2.事務所の設置

事務所の設置には、営業形態によって立地条件も様々です。

業務を営むに当たって、その拠点となる事務所または店舗を構えることとなります。

業態によって異なりますが、営業という側面上、事務所の立地条件は当然ながら

重要ですし、宅建業の免許を申請するための要件もクリアする必要があります。

主な要件は下記のとおりです。

 

宅建業免許を取得するための事務所の要件
宅地建物取引士(宅建士)の設置    

⇒ 専任の宅地建物取引士を、従業員5名につき1名以上の割合で配置すること。

標識の掲示    

⇒ 不動産業を営む資格を有していることを誰もが確認できるよう、

⇒ 顧客に見える位置に宅地建物取引業者票を掲示すること。

報酬額の掲示    

⇒ 仲介などサービスごとに生じる報酬額について、

⇒ 明確な計算方法で決定しているか掲示すること。

従業員名簿の備付け    

⇒ 宅地建物取引士の設置人数が適切か、誰がどんな業務にあたっているか

  明確にするためにも、従業員名簿を備え付けること。

帳簿の備付け    

⇒ 取引内容を帳簿に逐一記載し、更にその帳簿を事務所内に備え付けること。

 

3.開業資金(営業保証金)の確保

営業保証金の供託

宅建業を営む際の開業資金の中で、最も大切なものの一つが「営業保証金」です。

宅建業法の定めにより、主たる事務所が1,000万円、従たる事務所ごとに500万円という

営業保証金を供託することが義務づけられています。

営業保証金とは、宅建業者が免許取得後に預ける供託金のことです。

営業保証金制度においては、宅建業者が自ら供託所に営業保証金を供託します。

宅建業者の経営が悪化して代金が支払えない事態になった場合には、

供託所に預けられた保証金から顧客に対して代金が弁済されます(還付)。

 

保証協会への加入

営業保証金は高額です。

営業保証金を供託することが難しい場合は

保証協会に加入し、弁済業務保証金分担金を納めることで

営業保証金が免除となります。

(弁済業務保証金分担金…主たる事務所:60万円、従たる事務所毎:30万円)

※別途協会の入会金等が必要となります。

 

4.免許の申請

宅地建物取引業法」に定められた各種の要件を整えて申請手続をします。

免許申請の後、厳格な審査を経て受理が決定されます。

所在地など概要のほかに、申請者や会社の役員が欠格事由に該当しないか、

事務所形態が業務を継続的にできる機能を有しているか、

一定数の宅地建物取引主任者を設置しているか、といったことについて

厳密に審査が行われます。

 

まとめ

以上が不動産取引で独立するために必要な要件となります。

法人の設立や、行政への免許の申請などもあり、開業に時間を取られる場合は、

行政書士などの専門家に代行申請をしてもらうことをお勧めします。